• 2025年10月2日

お子様のインフルエンザでの熱さましについて  ~アセトアミノフェンがおすすめ!~

院長宗形です。先日のインフルエンザブログで言及していたお子様のインフルエンザの際の熱さましについて述べさせていただきます。

ご存じの通り、インフルエンザは主に冬季に流行するウイルス感染症です。インフルエンザウイルスに感染すると高熱、咳、のどの痛み、関節痛、筋肉痛などを自覚し、一般的に風邪よりも強い症状がでます。また、時に重症化して肺炎や脳炎などの重篤な合併症を引き起こし、命に関わることもあります。

インフルエンザの治療には、タミフルやリレンザ、ゾフルーザ、イナビルなどの抗インフルエンザ薬が用いられますが、これらの薬はウイルスの増殖を抑えるものであり、直接熱を下げる効果はありませんし、高い効果を得るには発症から早いタイミング(48時間以内)に開始する必要があります。

そこで、インフルエンザに伴う発熱や痛みに対しては解熱鎮痛薬が併用されることが多いのですが、これらの薬の中には小児のインフルエンザと相性が悪いものもあります。

今回は、小児のインフルエンザに対して比較的安全に使用できるアセトアミノフェンという薬について、その特徴や注意点を解説いたします。

アセトアミノフェンとは

アセトアミノフェンは解熱鎮痛薬と呼ばれる薬の一種です。その名の通り、熱を下げる「解熱薬」としての効果を持つと同時に、痛みをとる「鎮痛薬」としての働きも持っています。

熱を下げる仕組みとしては、脳にある体温を調整する部位に働きかけて体の血管を拡張させることで熱を外に逃がし、体温を下げるとされています。

また、痛みを引き起こす物質が体内で生成されるのを阻害することで、痛み止めとしても働きます。

平熱の方が飲んでも過剰に熱が下がることはないので、痛み止めだけとして使うこともできますし、逆に解熱剤だけとして使うこともできる薬です。

そのため、熱や頭痛、歯痛、生理痛、関節痛など、様々な場面で昔から使われています。

アセトアミノフェンとは一般名(薬の成分そのものの名前)であり、製品名としてはカロナールやアンヒバ、アルピニーなどがあります。

また、錠剤の他に粉薬やシロップ、坐薬などさまざまな剤型が用意されており、使い勝手の良い薬です。

特長として、他の種類の解熱鎮痛薬で時に認められる胃腸および腎臓への障害や、胎児への影響といった副作用のリスクが少ないため、高齢者や乳幼児、妊産婦さんなどにも広く用いられています。

ただし、どの薬にも言えることですが指示された用法用量は必ず守りましょう。アセトアミノフェンは肝臓で処理されるため、過剰に服用すると肝臓に障害を起こすことがあります。また、同様に肝臓で処理されるアルコールとは相性が良くないため、(大人の方であれば)飲酒前後の服用は避けるべきです。

小児のインフルエンザではアセトアミノフェンがおすすめ

前述したように、風邪やインフルエンザなどのウイルス感染症では発熱や色々な痛みを伴うため、解熱鎮痛薬を病院で処方される機会も多いと思います。

そのなかでも特に小児のインフルエンザに伴う発熱に対しては、解熱鎮痛剤としてアセトアミノフェンが推奨されています。

その理由は、ある種の解熱鎮痛薬でインフルエンザ脳症という重篤な合併症の発症・死亡リスクが高くなるとされているからです。

インフルエンザ脳症とは、インフルエンザウイルスに感染した後に、高熱や意識障害、けいれんなどの神経症状が急速に進行する病気です。

特に15歳未満の小児に多く見られ、一旦かかってしまうと30%の方が死亡、後遺症も25%に残るとされる非常に怖い疾患です。

インフルエンザ脳症の原因や増悪因子はまだ完全には解明されていませんが、インフルエンザに伴う発熱に使用したメフェナム酸やジクロフェナクナトリウムといった解熱剤が関係している可能性が指摘されています。

また、インフルエンザや水ぼうそうの際の解熱剤としてアスピリンを小児が使用した際に、急性脳症や肝臓への脂肪蓄積をきたし、命にかかわるライ症候群という病気を起こす可能性も指摘されています。

そのため、小児のインフルエンザもしくはその疑いの場合にはメフェナム酸(ポンタールなど)、ジクロフェナクナトリウム(ボルタレンなど)、アスピリン(バファリンAなど)は内服を避けるようにしましょう。

最近よく使われるロキソプロフェンナトリウム(ロキソニンなど)でもライ症候群の報告があります。そもそも同薬剤は15歳未満の小児への投与が想定されておらず、安全性が確立していないため小児には使用すべきではありません。

その一方、アセトアミノフェンは小児にも使えてインフルエンザ脳症のリスクを増加させることが無く、安全に使用することができます。

まとめ

インフルエンザはウイルス感染症であり、高熱や咳などのつらい症状が出ます。

ご両親としてはお子さんがインフルエンザになってしまった場合、一刻もはやく熱を下げてあげたいと思うのは自然なことですが、解熱鎮痛剤の中には小児のインフルエンザの際には避けるべきものがあります。手元にあるからと言って大人用の熱さましを使うことは絶対にやめてください。

その一方で安全に使用できる薬剤としてアセトアミノフェンがあります。

本人に処方されたお薬以外は決して使わず、指示された用法・容量をきちんと守って使うことが一番安全です。

(成人のインフルエンザの場合にはインフルエンザ脳症やライ症候群のリスクが低いため、アセトアミノフェン以外の解熱鎮痛剤も一般的に使用されます。)

また、まずはインフルエンザにかからないことが大切です。

インフルエンザワクチンの接種や、手洗い・うがいなどの感染対策を行い、それでも残念ながらインフルエンザが疑われる症状が出た場合は早めに小滝橋そら内科クリニックへご相談ください。

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