• 2025年6月20日
  • 2025年6月22日

今話題のGLP-1作動薬の自己注射って何? 糖尿病や肥満症の新しい治療選択肢 マンジャロやウゴービ等について。

糖尿病や肥満症は治療すべき病気です

院長の宗形です。今日は最近話題になっている糖尿病や肥満症に対する自己注射について解説いたします。

近年、食の欧米化やライフスタイルの変化により肥満の方が増えています。「食事制限も運動もがんばっているのに痩せられない」「リバウンドを繰り返してしまう」と悩む方も多いのではないでしょうか。

ただ単に体重が重いだけの肥満とは異なり、肥満に関連する高血圧、脂質異常症、糖尿病や内臓脂肪の蓄積がある場合には、肥満「症」として病気ととらえられるようになってきています。

つまり、肥満症は医学的に減量が必要な病態であり、積極的な治療が必要です。

また、糖尿病に関しても放置すれば脳梗塞や心筋梗塞の危険因子になり、三大合併症といわれる糖尿病性の神経障害・網膜症・腎症などを発症して四肢の切断や失明、人工透析につながる危険性もあります。 将来にわたって健康を保つために肥満症や糖尿病は治療すべきですが、治療のひとつの方法としてご自宅でできる自己注射という選択肢があります。

■ GIP/GLP-1, GLP-1受容体作動薬とは?

近年、肥満症や糖尿病の新たな治療選択肢として注目されているのが、GIP/GLP-1またはGLP-1受容体作動薬という自己注射型の薬剤です。

これらはもともと糖尿病の治療薬として開発された薬剤で、人の消化管から分泌されるインクレチンというホルモンの一種であるGIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)やGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)という物質を模して薬剤にしたものであり、以前から糖尿病の治療で用いられているインスリンの注射とは異なります。

これらの物質は以下のような働きをします:

  • インスリン分泌を促進し、血糖値を安定化
  • 胃の動きをゆっくりにする(満腹感の持続)
  • 脳に働きかけて食欲を抑える

これらを薬剤として外から補うことにより糖尿病を治療し、「食欲を抑える」作用によって体重減少効果も認められています。

代表的な薬剤とその特徴

2025年6月現在、日本で使われている主要な自己注射薬は以下の通りです:

● ビクトーザ(リラグルチド)

  • GLP-1受容体作動薬
  • 1日1回の自己注射
  • 保険適用疾患: 2型糖尿病

● トルリシティ(デュラグルチド)

  • GLP-1受容体作動薬
  • 週1回の自己注射、容量固定・針一体型
  • 保険適用疾患: 2型糖尿病

● オゼンピック(セマグルチド)

  • GLP-1受容体作動薬
  • 週1回の自己注射、針は別に装着し、容量は都度設定(容量固定、針一体型のSD製剤もあり)
  • 保険適用疾患: 2型糖尿病

● ウゴービ(セマグルチド)

  • GLP-1受容体作動薬
  • オゼンピックと同じ薬剤だが、肥満症治療のため高用量まで使える
  • 週1回の自己注射、容量固定・針一体型
  • 保険適用疾患:肥満症、ただし保険適用できる施設は総合病院などに限られる

● マンジャロ(チルゼパチド)

  • GIP/GLP-1受容体作動薬
  • GLP-1に加え、GIP受容体にも作用
  • より強力な食欲抑制・血糖コントロールが可能
  • 週1回の自己注射、容量固定・針一体型
  • 保険適用疾患: 2型糖尿病
  • 販売会社の説明サイト:https://jp.lilly.com/diabetes_consumer/usage-mounjaro

● ゼップバウンド(チルゼパチド)

  • GIP/GLP-1受容体作動薬
  • GLP-1に加え、GIP受容体にも作用
  • マンジャロと同じ薬剤だが、肥満症適応で販売名が異なる
  • 週1回の自己注射、容量固定・針一体型
  • 保険適用疾患: 肥満症、ただし保険適用できる施設は総合病院などに限られる

このように何種類もの薬剤がありますが、利便性から週1回投与の薬剤が主流となりつつあります。

また、容量が固定されて注射針がセットになった1回使い切りの薬剤が増えています。 投与量については最初の4週間程度は低用量から初めて副作用などを確認したうえで、徐々にその方にあった維持量まで増やしていきます。

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自己注射の方法とは?

注射というと針を扱ったり痛かったりといった怖いイメージがある方も多いですが、多くの製材では非常に細い針があらかじめ器具にセットされており、針に触れることなく注射が可能です。

実際の手順は院内で医療スタッフが詳しく説明いたしますが、注射部位を消毒して器具を皮膚に押し当て、ボタンを押すだけで簡単に、痛みも少なく投与が可能です。 投与場所としては太ももや腹部、二の腕の外側で、打つ度に少しずつ場所を変えましょう。

副作用は?

消化器を中心に作用する薬剤であり、主に胃腸に関する副作用が知られています。

悪心や下痢、消化不良、食欲減退、便秘などが5%以上の方に見られ、その他にもまれな副作用として急性膵炎や胆のう炎、胆管炎なども報告されています。

また、特に他の糖尿病薬を併用している場合には低血糖を生じて脱力感や倦怠感、冷や汗、動悸、震えをきたすこともあり、薬剤の使用中に体調不良を感じた場合にはすぐにご連絡ください。

当院での治療、保険適用について

1,糖尿病をお持ちの方

保険適用で治療が可能です。

自己注射の方法は模型を用いて説明し、十分に習得いただいた上で治療を開始します。

定期的に診察や採血、体重・腹囲測定などを行って治療効果の判定をしていきます。

ただし、薬剤によってはBMIが23未満の方については安全性が確立されていないため治療をお断りすることがございます。

自己注射を開始したら、必ずしもずっと継続しなければならないわけではありません。状況を見ながら内服へ変更したり、注射薬剤の減量・中止を検討していきます。

2,糖尿病をお持ちでない方

肥満症に対して保険適用となっている薬剤もありますが、現時点では肥満症として保険適用できる施設に基準が定められています。基準の中に教育研修施設であること、というものがあり、通常クリニックではこの基準を満たすことができません。

肥満症に対して保険診療をご希望の方には総合病院や大学病院の肥満症外来をご紹介させていただくか、当院での自費診療となります。自費診療の費用については表をご参照ください。(保険適用外の自費診療では万一副作用が発生した際に副作用救済制度の対象外となります。)

最後に

肥満症や糖尿病治療の大原則は食事運動療法であることは疑う余地がありません。

ですが、努力しても目標値を達成できずに治療を中断した結果、大きな病気につながってしまう可能性があることを考えると、適切な薬物治療というものは無視すべきではないと考えます。

薬物治療のひとつとしてご自宅での自己注射が使えるようになり、選択肢が広がっています。 ご興味がある方、質問がある方は、まずは一度お気軽にご相談ください。当院はご相談だけでも大歓迎です。

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