- 2026年1月4日
めまい・動悸・疲れやすさ…それ、貧血が原因かもしれません|症状・原因・治療をくわしく解説
・貧血って、実はとても身近な病気です
小滝橋そら内科クリニックの宗形です。
皆様、あけましておめでとうございます。本年も皆様のお役に立てるような情報を発信してまいります。
前回から少し間があいてしまいましたが、本日はご相談の多い「貧血」についてお話しします。
健康診断で指摘されたものの、「毎年言われているし、よくあることだから」と様子を見てしまっている方が少なくありません。
しかし貧血は、動悸・息切れ・めまい・疲れやすさなど、日常生活の質を大きく下げてしまう原因になります。
健康的で健やかな日々を送るためにもぜひ最後までご覧ください。
・そもそも「貧血」とはどんな状態?
貧血とは、血液中の赤血球に含まれる「ヘモグロビン(Hbや血色素量と記載されることもあります)」という成分が、基準より少なくなった状態を指します。ヘモグロビンは、肺で取り込んだ酸素を全身に運ぶ役割を担っています。
そのため、ヘモグロビンが不足すると体は慢性的な「酸欠状態」になり、
- 動悸
- 息切れ
- めまい・立ちくらみ
- 倦怠感・疲れやすさ
といった症状が現れやすくなります。
「血が薄い」と表現されることもありますが、体が必要とする酸素を運ぶ力が弱くなっている状態と考えると分かりやすいでしょう。

・貧血の症状は意外と気づきにくい
貧血の症状は、急に進行した場合には強く出ますが、
ゆっくり進行した場合は、かなり数値が下がるまで自覚症状が乏しいこともあります。
- 動悸がする
- 以前より疲れやすい
- 階段で息切れする
- めまい・立ちくらみ
- 集中力の低下
といった症状を「年齢のせい」「忙しいから」と思っていたら、実は貧血が原因だった、というケースも珍しくありません。
特に高齢者では、転倒リスクや心不全悪化との関連も報告されています。
(Anemia and cardiovascular disease, J Am Coll Cardiol. 2003)
・貧血の原因で一番多いのは「鉄欠乏性貧血」
貧血の原因で最も多いのが鉄欠乏性貧血です。
ヘモグロビンの材料は「鉄」ですが、この鉄が不足すると十分なヘモグロビンを作れなくなり、貧血になります。
鉄欠乏性貧血の主な原因
- 月経による慢性的な出血(特に女性)
- 食事からの鉄分摂取不足
- 胃潰瘍・胃炎・大腸ポリープ、痔など消化管からの出血
女性に多い印象がありますが、まれに胃癌や大腸癌からの出血で鉄欠乏性貧血をきたすことがあり男性や閉経後の女性で貧血が見つかった場合には、消化管出血の有無を確認することが重要です。
(British Society of Gastroenterology Guidelines, Gut. 2011)
・鉄欠乏性貧血以外の貧血もあります
貧血=鉄不足、と思われがちですが、それ以外の原因もあり、主なものを記載します。
① ビタミンB12・葉酸欠乏による貧血
ビタミンB12や葉酸は、DNA合成に大切な要素で、赤血球を作るために必要です。
不足すると、赤血球がうまく作れず貧血になります。
特にビタミンB12は、胃粘膜から分泌される内因子を介して吸収されるため胃の働きと深く関係しています。
胃の病気がある方、胃を切除したことがある方では吸収障害により不足しやすくなります。
② 腎臓の病気による貧血
腎臓は尿を作るだけではなく、赤血球を作る指令を出すエリスロポエチンというホルモンを分泌しています。
慢性的な腎臓病があるとこのホルモンが不足し、貧血になることがあります。
腎臓が原因の貧血を腎性貧血といいますが、腎性貧血がすすむと心血管イベントといわれる心筋梗塞や脳卒中、心不全での入院、心血管死が増加することが報告されており、腎性貧血も治療の対象となります。
③ アルコールや慢性疾患に伴う貧血
過度の飲酒や慢性的な炎症性疾患でも、貧血をきたすことがあります。
このように、貧血には複数の原因があり、それによって治療法が大きく異なるため、正確な診断が重要です。
・どれくらいの数値で治療が必要?
WHO(世界保健機関)の基準では、
- 男性:ヘモグロビン 13.0 g/dL 未満
- 女性:ヘモグロビン 12.0 g/dL 未満
で「貧血」と診断されます。(World Health Organization, 2011)
一般的に、ヘモグロビンが10 g/dLを下回ると体への負担が大きくなり、治療が必要と考えます。
もともと病気をお持ちの方は、もっと高いヘモグロビン値でも症状が出ることがあり、数値+症状+基礎疾患を総合的に判断して治療を行う必要があります。

・サプリメントで治せますか?
軽度の鉄不足が原因であれば、市販の鉄サプリで改善する場合もあります。
しかし、
- 本当に鉄不足が原因なのか
- 出血が隠れていないか
は、検査をしなければ分かりません。
また、サプリメントは品質にばらつきがあることもあり、十分な効果が得られない、または予期しない副作用が出てしまうケースもあります。
そのため、貧血を指摘された場合は、一度医療機関での検査をおすすめします。
・病院ではどんな検査をするの?
基本は採血検査です。
貧血の数値(ヘモグロビン)・血液中の鉄濃度の他に、フェリチンといわれる体内に蓄えられている鉄の量(貯蔵鉄)や、鉄の運搬能力などを調べます。
また、鉄欠乏性貧血以外の要素が疑われる場合には、ビタミンB12や葉酸、その他貧血をきたす原因が無いかをチェックすることもあります。
急激に進行する鉄欠乏性貧血の場合、必要に応じて便潜血や胃カメラ・大腸カメラで出血源がないか確認することもあります。
・鉄欠乏性貧血の治療方法
1,内服治療
鉄剤の内服が基本です。
よくある副作用として、
- 胃の不快感
- 吐き気
- 便秘・下痢
- 便が黒くなる(心配ありません)
などがあります。
特に飲み始めると便が黒くなるためびっくりする方が多いですが、胃酸などで酸化された鉄の色なので心配ありません。
胃もたれが強く出る場合、鉄剤の量を変えたり、シロップを含む他の鉄剤に変更したりすることで多くは対処可能です。



2,点滴・注射・輸血
内服が難しい場合や、急激に貧血が進行した場合、吸収障害があるときは、点滴での鉄投与や輸血を検討することもあります。



・治療期間はどのくらい?
鉄欠乏性貧血の場合、鉄剤を開始すると1〜2か月で症状は改善してきます。
しかし、体内に十分な鉄の蓄えが無い状態で症状が良くなったからと治療を途中でやめてしまうと、再発しやすいため注意が必要です。
そのため、血液検査で貯蔵鉄(フェリチン)が正常化するまでは治療することが求められます。(Cappellini MD et al. Iron deficiency anemia revisited. J Intern Med. 2020)
一般的にフェリチンが正常化するまでは半年程度の治療が必要となることが多いです。
・日常生活で気をつけること
鉄欠乏性貧血の場合、まずは食事から必要な鉄分を摂取するよう心掛けましょう。
有名なレバー、赤身の肉といったもののほかに、かつお・まぐろのような赤身の魚や貝類にも鉄分は多く含まれています。
また野菜ではよく言われるほうれん草以外にも、小松菜、切り干し大根、ひじきなどが鉄分を多く含んでいます。
これらの食事をバランスよく日常の食事に取り入れるようにしましょう。
その他に、過度なダイエットは避ける、月経量が多い場合は婦人科へ相談するといったことも大切です。
・おわりに
「ちょっと疲れているだけ」と思っていた症状が、貧血のサインであることもあります。
健康診断で貧血を指摘された、気になる症状がある、という方はどうぞお気軽にご相談ください。
今回も最後までお付き合いいただきありがとうございました。
参考文献
- Anker SD, Voors AA, Okonko DO, et al.
Anemia and cardiovascular disease. Journal of the American College of Cardiology. 2003;41(4):725–732. - Goddard AF, James MW, McIntyre AS, Scott BB.
Guidelines for the management of iron deficiency anaemia. Gut. 2011;60(10):1309–1316. - World Health Organization.
Haemoglobin concentrations for the diagnosis of anaemia and assessment of severity.
WHO/NMH/NHD/MNM/11.1, 2011. - Cappellini MD, Musallam KM, Taher AT.
Iron deficiency anemia revisited. Journal of Internal Medicine. 2020;287(2):153–170.